「自分の文章って、なんだか稚拙に感じてしまう・・・」
そう感じてしまったときは、話し言葉と書き言葉を見直すことで改善する可能性があります。
この記事では、話し言葉と書き言葉の意味や直し方を解説しています。また、表現の違いを一覧表でまとめました。
表記チェック時の参考にしていただけますので、文章の質を上げたい方は、ぜひチェックしてみてください!
「話し言葉・書き言葉」違い一覧表
「話し言葉」「書き言葉」の違いを、副詞表現・接続詞表現・形容詞表現・その他で分類し、一覧表にしました。
一例ではありますが、気になる語句がある方はチェックしてみてください。
副詞表現
話し言葉 | 書き言葉 |
---|---|
ちょっと | 少し |
もっと | より・更に |
たぶん | おそらく |
ほとんど | ほぼ |
全然 | 全く |
ばっかり | ばかり |
やっと | ようやく |
いつも | 常に |
ちゃんと | きちんと |
やっぱり | やはり |
とても | 大変・非常に |
すごく | 大変・非常に |
どんどん | 急速に・急激に |
だんだん | 次第に・徐々に |
接続詞表現
話し言葉 | 書き言葉 |
---|---|
とか | など |
だから | したがって |
なので | したがって |
でも | しかし |
なんで | なので |
ですから | そのため |
だけど | しかし・だが |
~から | ~ため |
~ので | ~ため |
~して | ~し |
~けど | ~が |
~しないで | ~せずに |
~ていて | ~ており |
~のに | ~にもかかわらず |
~と~ | および |
形容詞表現
話し言葉 | 書き言葉 |
---|---|
いろいろな | 様々な |
大切な | 重要な |
どんな | どのような |
たくさんの | 多くの |
面白い | 興味深い |
すばらしい | 優れている |
いっぱい | 多い |
その他
話し言葉 | 書き言葉 |
---|---|
てゆう | という |
なんか | など |
そういう | そのような |
しょうがない | 仕方ない |
おんなじ | おなじ |
「話し言葉」と「書き言葉」とは?
「話し言葉」と「書き言葉」はどちらも日本語の一種ですが、使い方に違いがあります。話し言葉は、会話をするときに使用する言葉で、くだけた表現や省略が多く使われます。一方書き言葉は、文章を書くときに使用する言葉で、形式的な表現が用いられます。
特徴を細かく分類すると以下の通りです。
- 話し言葉
-
- 一般的にカジュアルな表現が許容される
- 文法や構文の規則が比較的柔軟
- パラ言語的要素(トーン、強調、速さなど)が使用できる
- 書き言葉
-
- 文法や構文の規則が厳格に遵守される傾向がある
- 一般的に形式的な表現が求められる
- パラ言語的要素を直接使用できず、文体や句読点を通じて情感を表現する
ここで例文を見てましょう。
私は今日、友人と一緒に映画を見に行きました。映画の内容はとても面白く、感動しました。しかし友人はあまり気に入らなかったようで、終わった後に「なんかつまんなかったよね」と言っていました。私は納得できなかったけど、彼女を否定しないように黙ってうなずきました。
上記文章の中で「しかし」や「あまり」は書き言葉ですが、「とても」「なんか」 「けど」は話し言葉です。わかりやすいポイントに絞り、以下のように修正してみます。
(修正後)
私は今日、友人と一緒に映画を見に行きました。映画の内容は大変面白く、感動しました。しかし友人はあまり気に入らなかったようで、終わった後に「つまらなかった」と言っていました。私は納得できませんでしたが、彼女を否定しないよう、黙ってうなずきました。
文章の印象が少し変わったと思います。
例文を読んで違和感を持った方もいると思いますが、ライティングにおいて重要なことは、話し言葉と書き言葉を混在させないことです。表現が混在していると、稚拙な印象を与えてしまうため注意しましょう。
話し言葉と書き言葉の使い分け
話し言葉と書き言葉を使うシーン例を以下にまとめています。(あくまで一般的な特徴で、必ずしもすべての場合に当てはまるわけではありません)
- 話し言葉が使えるシーン
-
- 友達や家族との会話
- 会議などでのディスカッション
- プレゼンテーションやスピーチ
- 日常的なメールやチャット
- ブログやSNSの投稿
- 書き言葉が必要なシーン
-
- 公式文書や契約書
- ビジネス文書
- 論文やレポート
- ニュース記事
- 学校のテストやレポート
ブログなどのWebメディアにおいて、エッセイなど自分語りの文章は、話し言葉を使ったほうが親近感を与えられます。しかし、それ以外の媒体では、基本的に書き言葉の使用が推奨されます。
話し言葉と書き言葉の使い分けを考えるうえで、書き言葉が必要となるシーンはあっても、話し言葉が必須となるシーンはない、という点も押さえておいたほうがいいでしょう。
そのため、ライターとしては、書き言葉のルールをある程度押さえておくことが重要です。
話し言葉と書き言葉を使い分ける際には、相手や場面をよく考えて、適切な言葉遣いを心がけましょう。
話し言葉を使用するときの注意点
「話し言葉」は自由度が高いというメリットがありますが、その一方で注意すべき点もあります。
- シーンを選ぶカジュアル表現
-
友達や親しい人との会話ではカジュアルな言葉遣いも許容されますが、教師、上司、顧客などとの会話では礼儀を尊重し、適切な敬語を使うべきです。
- パラ言語で誤解を招きやすい
-
話し言葉では、声のトーンや強調、表情などを通じて情感を伝えます。しかし、これらは人によって解釈が異なるため、誤解を招く可能性もあります。
- 一部公式の場では不適切
-
法廷、公的な発表、学術的な発表などでは、話し言葉のカジュアルさや自由度は不適切とされることがあります。そのような状況では、正式な言葉遣いや規範的な表現を使用することが求められます。
上記の点を考慮し、適切に「話し言葉」を使用しましょう。
書き言葉を使用するときの注意点
「書き言葉」は、正式なコミュニケーションや長い情報の伝達に便利ですが、以下のような注意点があります。
- 時間と労力がかかる
-
書き言葉は言葉を選び、文を組み立てる時間が必要です。そのため、即座の反応や素早いコミュニケーションが必要な場面では適さないことがあります。
- 形式と規範性の意識が必要
-
書き言葉は一般的に形式的であり、文法や構文の規則が厳しく適用されます。そのため、文法や表現を適説に使用する必要があります。
- 感情の伝達が難しい
-
書き言葉では、声のトーンや顔の表情を直接伝えることはできません。したがって、感情や強調を伝えるためには、適切な表現を工夫して使用する必要があります。
上記の注意点を考慮に入れながら、場面や目的に応じて適切に使用することが重要です。
「文語体・口語体」との違い
話し言葉や書き言葉の違いと混同しやすい文章形式に、文語体と口語体があります。文語体と口語体の違いや特徴は以下表の通りです。
口語体 | 文語体 |
---|---|
現代の言葉遣い | 古い言葉遣い |
話し言葉と書き言葉が基本的に一致 | 話し言葉と書き言葉が異なる |
誰にでも読めるわかりやすい文章 | 難解な文章 |
動詞の終止形が異なる | 動詞の終止形が異なる |
語彙、文法、用言の活用が異なる | 語彙、文法、用言の活用が異なる |
上記の通り、話し言葉・書き言葉とは分類の仕方が異なることがわかるかと思います。
具体的な言葉の違いや例文については、以下の表にまとめています。
種別 | 口語体 | 文語体 |
---|---|---|
丁寧表現 | だ・です・ます | である・です・ます |
命令 | しろ・して | なさい・なさるな・なさいませ |
疑問 | だろうか、か | であるか・ですか・ますか |
感嘆 | だ・よ | なり・ござる |
否定 | ない | ぬ・ず・べからず |
口語体例文 | 文語体例文 |
---|---|
彼は学生です | 彼は学生である |
まだ食べないでください | まだ食べなさるな |
それは本当です | それは本当であるか |
美しい花だ | 美しい花なり |
この先立ち入りはできない | この先立ち入るべからず |
文語体は古文などに用いられる形式ですので、現代の文章では、基本的に口語体の使用が多くなります。
しかし、すべての文語体が古い言葉遣いになるわけでもありません。文語体でも、現代の文章として不自然に見えない場合もありますし、口語体と文語体で重複する言葉もあるため、分類時は注意しておきましょう。
話し言葉→書き言葉へ直す例文とポイント
頭の中にある言葉をそのまま文章にすると、話し言葉になってしまうことが多いです。媒体によっては、話し言葉と書き言葉が混在して問題ないケースもありますが、統一したい場合は十分に意識しておく必要があります。
話し言葉を書き言葉に変換する際に見ておくべき、以下のポイントをそれぞれ解説します。
- 「ら」抜き言葉・「い」抜き言葉
- 「さ」入れ言葉
- 不適切な接続詞
- 曖昧表現(消極的表現)
- 二重表現(重複表現)
- カジュアル表現(若者言葉)
「ら」抜き言葉・「い」抜き言葉
「ら」抜き言葉や「い」抜き言葉とは、話し言葉特有の表現で、口語表現の一つです。一部の形容詞や動詞で、「ら」や「い」が省略されることで形成されます。
「ら」抜き言葉の例文は以下の通りです。
偏食の彼ですが、彼女の作ったオムライスは食べれます。
↓
偏食の彼ですが、彼女の作ったオムライスは食べられます。
「ら」抜き言葉の例 | 訂正後 |
---|---|
来れる | 来られる |
食べれる | 食べられる |
見れる | 見られる |
決めれる | 決められる |
起きれる | 起きられる |
着れる | 着られる |
「い」抜き言葉の例文は以下の通りです。
定時までには仕事を終わらせたいと思ってるんです。
↓
定時までには仕事を終わらせたいと思っているんです。
「い」抜き言葉の例 | 訂正後 |
---|---|
来てる | 来ている |
食べてる | 食べている |
走ってる | 走っている |
してた | していた |
してない | していない |
なってる | なっている |
「ら」抜き言葉や「い」抜き言葉は、話し言葉としてつい使ってしまいがちな代表例です。ライティングの際は注意しておきましょう。
「さ」入れ言葉
「さ」入れ言葉とは、謙譲語(自分がへりくだることで敬意を表す敬語)を使用する際に使いがちな表現です。
「さ」入れ言葉の例文は以下の通りです。
本日は体調不良のため休まさせていただきます。
↓
本日は体調不良のため休ませていただきます。
「さ」入れ言葉の例 | 訂正後 |
---|---|
休まさせていただく | 休ませていただく |
座らさせていただく | 座らせていただく |
読まさせていただく | 読ませていただく |
また、謙譲語だけでなく「〜させる」という表現でも「さ」入れ言葉になりがちなパターンがあります。
部下に今日中に書かさせないといけない原稿がある
↓
部下に今日中に書かせないといけない原稿がある
「さ」入れ言葉の例 | 訂正後 |
---|---|
書かさせる | 休ませていただく |
行かさせる | 座らせていただく |
走らさせる | 読ませていただく |
「さ」を入れるかどうか、見分ける方法として下記の方法があります。
- 手前の母音(a・i・u・e・o)が「a」で終わる場合 → 「さ」を入れない
- 手前の母音(a・i・u・e・o)が「a」以外で終わる場合 → 「さ」を入れる
- 買わ(wa)せていただく→「さ」不要
- 予約(ku)させていただく→「さ」必要
- 書か(ka)せる→「さ」不要
- 食べ(be)させる→「さ」必要
不適切な接続詞
文と文をつなぐ接続詞ですが、話し言葉特有の表現になってしまうことがあります。接続詞については上の表(接続詞表現)にもまとめていますが、以下に例文で示します。
話し言葉の接続詞例 | 訂正後 |
---|---|
週末はカフェや映画とかに行きたい | 週末はカフェや映画などに行きたい |
国語で良い点数を取った。でも、それ以外は赤点だった。 | 国語で良い点数を取った。しかし、それ以外は赤点だった。 |
今日は雨が降っています。なんで、傘を持って出かける。 | 今日は雨が降っています。なので、傘を持って出かける。 |
曖昧表現(消極的表現)
曖昧表現とは「〜みたい」「〜たり」「〜的」「〜な感じ」など、ぼかした表現を使うことで断定していないニュアンスを伝える表現です。
事例によっては曖昧表現が必要な場合がありますが、話し言葉では不必要に曖昧表現を付け足してしまうこともあります。
成功確率は高いみたいです
↓
成功確率は高いです
その他曖昧表現の例 | 訂正後 |
---|---|
未来の車のような感じです | 未来の車のようです |
文書を書いたりしてます | 文書を書いてます |
内容的には良かったんですが | 内容は良かったのですが |
書き言葉は文章だけで事実を正確に伝える必要があるため、言い切れる内容に対しては曖昧表現を使わないよう注意しましょう。
二重表現(重複表現)
二重表現とは、同じ意味またはほぼ同じ意味を持つ単語や表現が重複して使われることを指します。日本語表現として誤った言葉の代表例として挙げられるため、知っているか知らないかで差がつきます。
二重表現の例 | 訂正後 |
---|---|
頭痛が痛い | 頭痛がする/頭が痛い |
内定が決まる | 内定する/採用が内定する |
色が変色する | 色が変わる/変色する |
はっきり明言する | はっきり言う/名言する |
後で後悔する | 後で悔やむ/後悔する |
日本に来日する | 日本に来る/来日する |
上を見上げる | 上を見る/見上げる |
被害を被る | 被害を受ける/損害を被る |
カジュアル表現(若者言葉)
カジュアル表現はいわゆる若者言葉とも言われる言葉を指します。普段の口調がくだけた方が、頭の中に浮かんだ言葉をそのまま文章にすると、カジュアル表現の多い文章になりがちです。
このスイーツ、マジで美味しいんです。
↓
このスイーツ、本当に美味しいんです。
カジュアル表現の例 | 訂正後 |
---|---|
マジ | 本当に・真剣に・本気で |
やばい | すごく良い・すごく悪い・危険・困った |
めっちゃ | とても・非常に・大変・すごく |
ガチ | 真剣・本気・本当に |
ウケる | 面白い・おもしろい・笑える |
話し言葉から書き言葉に直すサイトやアプリ
話し言葉のパターンが知れたとしても、文章を書き上げたあとにすべて目視でチェックするのも大変です。
そこで話し言葉が含まれていないか、カンタンにチェックできるサイトやアプリをご紹介します。
表記ルールカスタム設定ツール
自身でチェックしたい表記ルールをセットし、入力テキスト内の表記を確認・表記ゆれがないかチェックできるツールです。
当サイトが製作・公開しているツールで、インストール不要・誰でも無料でご利用いただけます。
対象語句と訂正したい語句をワンセットとして登録すれば、チェックしたいテキスト内に含まれる話し言葉を一括で確認・置換まで可能です。
文賢
「文賢(ぶんけん)」は、Webマーケティング会社として有名なウェブライダー社がリリースしている、ライター・編集者向けの校閲・推敲チェックツールです。クラウド型のためインストール不要で利用できます。
- 読みやすさのチェック
- わかりやすさのチェック
- 不快語のチェック
- 日本語の誤用チェック
- 誤字・脱字のチェック
- 環境別の見え方チェック
話し言葉で稚拙な表現になっていないか、テキストを入力しながらリアルタイムでのチェックが可能です。
そのほかにも、文章を読みやすくするための校正・校閲機能が盛りだくさんですので、ライティング能力を向上させたい方はチェックしてみてください。
話し言葉と書き言葉について学べる本を紹介
話し言葉と書き言葉について、基礎的な知識だけでなく、文章や言葉について体系的に学べる本をご紹介します。
話し言葉と書き言葉の接点
本書は日本語学会2013年度春季大会(大阪大学)で行われた、学会シンポジウムをもとにした論文集です。
言語研究の各方面から、書き言葉・話し言葉の考察がなされた内容を知れます。
日本語の焦点
江戸期以来にあった「話し言葉の標準語」をスタンダードとして、話し言葉、書き言葉、仮名遣いの歴史を分析する一冊。
日本語の仮名遣いをについても、歴史的な観点から解説されています。
大人の語彙力ノート
テレビ番組でもお見かけすることの多い明治大学文学部教授の齋藤氏が執筆した本書は、さまざまシーンで使える実用的な文書テクニックが紹介されています。
書籍のテーマとしては語彙力に焦点を当てたもので、書き言葉と話し言葉の解説がされているわけではありませんが、おとなが使いたい言葉や表現を学べます。
わたしも購入して読みましたが、言い換え表現を探したい時にはとくに活用できるオススメの一冊です。
よくある質問
まとめ
「話し言葉・書き言葉」違いは主に以下ポイントで分類されます。
- 副詞表現
- 接続詞表現
- 形容詞表現
- その他
ライティングにおいては、話し言葉だけではなく、書き言葉を理解することが重要です。
話し言葉が絶対にNGというわけではないですが(当ブログも話し言葉を交えることはあります)、当記事で紹介した最低限の内容は把握しておきましょう。
参考:学生のレポートにおける話し言葉とその出現傾向|創価大学・創価女子短期大学学術機関
おまけの理解度クイズ!
当ページの内容を踏まえて、理解度チェックをしてみましょう!
ヒント:話し言葉はくだけた表現や省略が多く使われ、書き言葉は形式的な表現が用いられます。
ヒント:「ら抜き言葉」は一部の形容詞や動詞で、「ら」が省略されることで形成されます。
ヒント:書き言葉は一般的に形式的であり、文法や構文の規則が厳しく適用されます。