自分の文章を読んだとき「なんだか読みにくいな……」と感じたことはありませんか?
その理由を紐解くと、実は文章に占める漢字の割合が高いことに原因があったりします。
いわゆるWebライティング(ネット上の文章)においては、文章内の漢字をひらがな表記にするだけで、グンと読みやすくなることもあります。
そこでこの記事では、ひらがな表記が推奨される「ひらく漢字」の一覧を紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
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ひらく漢字とは?
「ひらく」とは、漢字をひらがなにする校正用語です。文章において「ひらく」とは、漢字表記をひらがなに直すことを意味しますので、「ひらく漢字」とはひらくことが推奨されている漢字と理解してください。
読みやすい日本語文章は「漢字3割・ひらがな7割」のバランス構成であると言われています。そのため、漢字をひらく目的は、読みやすい文章を作るためにあると言えます。
※専門性の高い媒体では、漢字の使用率が低いと文書の締まりが悪くなるため、漢字をあえて閉じる(漢字表記にする)ことが多いです。
Webメディアや新聞などの各媒体によって、漢字のひらき方に関する独自のレギュレーションもあるかと思いますが、「ひらく漢字」の一般的な知識を持っておくことは、読みやすい文章を作るために必要なことと言えるでしょう。
一般的にひらくことが推奨される漢字一覧表
Webメディアなどで「ひらく」ことが推奨されている漢字について、一覧表でまとめました。
漢字 | 表記1 | 表記2 | 補足 |
---|---|---|---|
過ぎ | すぎ | 連用形の後は漢字、昼すぎなどの時刻・年数・距離などはひらがな | |
例える | 例える | 例えば、例え話(副詞的用法) | |
走り回る | 走りまわる | 複合動詞のうしろの動詞はひらく | |
眠り続ける | 眠りつづける | 複合動詞のうしろの動詞はひらく | |
食べ始める | 食べはじめる | 複合動詞のうしろの動詞はひらく | |
敢えて | あえて | 副詞 | |
恐らく | おそらく | 副詞 | |
且つ | かつ | 副詞 | |
既に | すでに | 副詞 | |
大体 | だいたい | 副詞 | |
大抵 | たいてい | 副詞 | |
沢山 | たくさん | 副詞 | |
正に | まさに | 副詞 | |
是非 | ぜひ | 副詞 | |
偶に | たまに | 副詞 | |
時々 | ときどき | 副詞 | |
一層 | いっそう | 副詞 | |
極めて | きわめて | 副詞 | |
更に | さらに | 副詞 | |
随分 | ずいぶん | 副詞 | |
大層 | たいそう | 副詞 | |
全く | まったく | 副詞 | |
最も | もっとも | 副詞 | |
空いた | あいた | すいた | 読み方複数あり |
開ける | あける | ひらける | 読み方複数あり |
生物 | いきもの | せいぶつ | 読み方複数あり |
一時 | いちじ | いっとき | 読み方複数あり |
銀杏 | いちょう | ぎんなん | 読み方複数あり |
行った | いった | おこなった | 読み方複数あり |
方 | かた | ほう | 読み方複数あり |
細々 | こまごま | ほそぼそ | 読み方複数あり |
様 | さま | よう | 読み方複数あり |
上手 | じょうず | かみて | 読み方複数あり |
人事 | じんじ | ひとごと | 読み方複数あり |
辛い | つらい | からい | 読み方複数あり |
止める | とめる | やめる | 読み方複数あり |
何時 | なんじ | いつ | 読み方複数あり |
臭い | におい | くさい | 読み方複数あり |
夫婦 | ふうふ | めおと | 読み方複数あり |
下手 | へた | したて | 読み方複数あり |
訳 | やく | わけ | 読み方複数あり |
汚れ | よごれ | けがれ | 読み方複数あり |
内 | うち | 朝のうち、3日のうち1日は、などの形式名詞は「うち」 | |
来る | くる | 朝が来るなどの動詞は漢字、行ってくるなどの補助動詞はひらがな | |
及び | および | 接続詞の「及び」はひらがな | |
従って | したがって | 接続詞 | |
但し | ただし | 接続詞 | |
尚 | なお | 接続詞 | |
並びに | ならびに | 接続詞 | |
又は | または | 接続詞 | |
故に | ゆえに | 接続詞 | |
兎 | うさぎ | 常用漢字表にない音訓 | |
閃く | ひらめく | 常用漢字表にない音訓 | |
頁 | ページ | 常用漢字表にない音訓 | |
棲息 | 生息 | 常用漢字表にない音訓 | |
貴女 | あなた | 常用漢字表にない音訓 | |
貴方 | あなた | 常用漢字表にない音訓 | |
予め | あらかじめ | 常用漢字表にない音訓 | |
如何に | いかに | 常用漢字表にない音訓 | |
如何にも | いかにも | 常用漢字表にない音訓 | |
何れ | いずれ | 常用漢字表にない音訓 | |
戴く | いただく | 常用漢字表にない音訓 | |
所謂 | いわゆる | 常用漢字表にない音訓 | |
上手く | うまく | 常用漢字表にない音訓 | |
美味しい | おいしい | 常用漢字表にない音訓 | |
概ね | おおむね | 常用漢字表にない音訓 | |
流石 | さすが | 常用漢字表にない音訓 | |
暫く | しばらく | 常用漢字表にない音訓 | |
直ぐ | すぐ | 常用漢字表にない音訓 | |
凄い | すごい | 常用漢字表にない音訓 | |
則ち | すなわち | 常用漢字表にない音訓 | |
即ち | すなわち | 常用漢字表にない音訓 | |
只 | ただ | 常用漢字表にない音訓 | |
唯 | ただ | 常用漢字表にない音訓 | |
貯める | ためる | 常用漢字表にない音訓 | |
溜める | ためる | 常用漢字表にない音訓 | |
容易い | たやすい | 常用漢字表にない音訓 | |
鏤める | ちりばめる | 常用漢字表にない音訓 | |
終に | ついに | 常用漢字表にない音訓 | |
遂に | ついに | 常用漢字表にない音訓 | |
繋がる | つながる | 常用漢字表にない音訓 | |
にも拘らず | にもかかわらず | 常用漢字表にない音訓 | |
温い | ぬるい | 常用漢字表にない音訓 | |
博打 | ばくち | 常用漢字表にない音訓 | |
相応しい | ふさわしい | 常用漢字表にない音訓 | |
殆ど | ほとんど | 常用漢字表にない音訓 | |
未だ | まだ or いまだ | 常用漢字表にない音訓 | |
迄 | まで | 常用漢字表にない音訓 | |
以って | もって | 常用漢字表にない音訓 | |
以て | もって | 常用漢字表にない音訓 | |
所以 | ゆえん | 常用漢字表にない音訓 | |
拠って | よって | 常用漢字表にない音訓 | |
見出す | 見いだす | 常用漢字表にない音訓 | |
活かす | 生かす | 常用漢字表にない音訓 | |
総て | 全て | 常用漢字表にない音訓 | |
凡て | 全て | 常用漢字表にない音訓 | |
時 | とき | 時期・時間・時刻を示すものは漢字、場合を示す形式名詞はひらがな | |
明後日 | あさって | 字音訓で読む場合は漢字でもよい | |
何故 | なぜ | 字音訓で読む場合は漢字でもよい | |
言う | いう | 思ったことを言葉で表す・述べる場合は「言う」。実質的な意味が薄れた場合は「いう」 | |
風 | ふう | 今風などは漢字、こんなふうになどはひらがな | |
子供 | 子ども | 公的文書では「子ども」表記が多く使われています。 | |
する上 | するうえ | 形式名詞 | |
する事 | すること | 形式名詞 | |
する度 | するたび | 形式名詞 | |
する時 | するとき | 形式名詞 | |
する他 | するほか | 形式名詞 | |
という物 | というもの | 形式名詞 | |
事 | こと | 具体的な事柄は漢字、抽象的な内容はひらがな | |
一人 | ひとり | 慣用句などは「一人」、人数などは「1人」、孤独などは「独り」 | |
つくる | つくる | 会社、金、機会などの抽象名詞はひらがなで「つくる」 | |
致します | いたします | 補助動詞 | |
頂く | いただく | 補助動詞 | |
下さい | ください | 補助動詞 | |
所 | ところ | 位置・場所は漢字、それ以外・誤読のおそれがある場合はひらがな | |
度 | たび | このたび、~するたび、などはなるべくひらがな | |
一人一人 | 一人ひとり | くりかえす言葉のうしろをひらく | |
重ね重ね | 重ねがさね | くりかえす言葉のうしろをひらく | |
付く | つく | くっつく・加わるものは漢字、色気づく・傷つく・近づくなどは慣用でひらがな書き | |
後 | あと | あと一息、あと3時間などはひらがな書き | |
出来る | できる | ~することができる、などの動詞・副詞はひらがな | |
良い | よい、いい | ~してよい、もうよい、などの補助用言・接尾語はひらがな | |
物 | もの | ~したものだ、切腹もの、などの形式名詞はひらがな | |
無い | ない | 「有」の対語は漢字、~しない、などの用法ではひらがな | |
勿論 | もちろん | 「勿(もち)」常用漢字表にない音訓 | |
子供達 | 子どもたち | 「私達」や「子ども達」で使われる「達(たち)」などの接尾語 | |
最早 | もはや | 「最早(もはや)」の「最(も)」は常用漢字表にない音訓 | |
行く | いく | 「行く」の意味が薄れた場合はひらがなで「いく」 | |
始め | はじめ | (主たるもの)をはじめ、の場合はひらがな | |
色々 | いろいろ | ||
様々 | さまざま | ||
爽やか | さわやか | ||
大変 | たいへん | ||
確かに | たしかに | ||
例えば | たとえば | ||
匂い | におい | ||
紛らわしい | まぎらわしい | ||
基づく | もとづく | ||
易い | やすい |
媒体によってレギュレーションも異なるため、この表に記載の内容はあくまで参考として認識いただければと思います。しかし、知らないよりも知っておいたほうがいい情報であることは確かです。
ぜひ参考にしてみてください。
ひらく漢字の基準を7つに分類して解説
ひらく漢字の基準はいくつかに分類できます。
- 常用漢字表にない音訓
- 読み方が複数ある漢字
- 接続詞
- 副詞
- 形式名詞
- 敬語に分類される補助動詞
- 複合動詞のうしろの動詞
①常用漢字表にない音訓
- 殆ど
-
ほとんど
- 流石
-
さすが
- 予め
-
あらかじめ
常用漢字表とは、文化庁が定める、現代の国語を書き表す場合に使用する漢字の範囲を「目安」として示したものです。常用漢字表に記載されていない漢字は、ひらがな表記にすることが推奨されます。
こちらのサイトで検索もできるので、興味のある方はチェックしてみてください。
文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 常用漢字表の音訓索引
②読み方が複数ある漢字
- 空いた
-
あいた・すいた
- 行った
-
いった・おこなった
- 何時
-
なんじ・いつ
読み方が複数ある漢字の場合、読み違えてしまう可能性があります。
読者に少しでもストレスを与えないために、上記のような漢字はひらいておくとよいでしょう。
③接続詞
- 但し
-
ただし
- 故に
-
ゆえに
- 及び
-
および
接続詞は文と文をつなぐ自立語です。一般的に、接続詞も漢字表記ではなく、ひらがなにひらくことが推奨されます。
④副詞
- 全く
-
まったく
- 最も
-
もっとも
- 一層
-
いっそう
副詞は、動詞・形容詞などの用言を修飾(詳しく説明)する単語です。
- 「彼の話はまったく信じられない。」
- 「彼はクラスでもっとも頭が良い。」
- 「彼をいっそう悩ませている存在。」
上記例のように、強調したいときに使う副詞はひらく、と理解しておくとよいでしょう。
また「是非(ぜひ)」「偶に(たまに)」「時々(ときどき)」などは、名詞や形容詞を修飾する「副詞的用法」として使用されることもあります。
⑤形式名詞
- する事
-
すること
- する度
-
するたび
- する時
-
するとき
形式名詞とは名詞の一種であり、それ自体は具体的な意味を持ちません。「~すること」など、動詞や形容詞と組み合わせて使用されます。
- 「毎日運動することが健康維持に大切です。」
- 「彼のギターの音色を聞くたび、子供の頃の思い出が蘇ってきます。」
- 「新しいプロジェクトを開始するとき、まずは十分なリサーチが必要です。」
⑥敬語に分類される補助動詞
- 致します
-
いたします
- 頂く
-
いただく
- 下さい
-
ください
補助動詞は、別の動詞に後続することで機能する補助的な動詞です。敬語を使う場合に使用する上記例のような補助動詞は、一般的にひらくことが推奨されています。
- 「お問い合わせいただけましたら、すぐに回答いたします。」
- 「昨日、先方から素敵なプレゼントをいただきました。」
- 「記載されましたら、書類をこちらにお渡しください。」
⑦複合動詞のうしろの動詞
- 走り回る
-
走りまわる
- 眠り続ける
-
眠りつづける
- 食べ始める
-
食べはじめる
複合動詞とは、2語以上の自立語からなる動詞のことで、「動詞+動詞」で構成される言葉を指すことが多いです。
上の例のように、走る+回るといった2語の動詞を組み合わせる場合、うしろの動詞はひらがなにひらくことが一般的です。
ひらく漢字チェッカー紹介
漢字のひらきを目視でチェックするのも大変ですので、ここではひらく漢字がカンタンにチェックできるツールをご紹介します。
(無料)ひらく漢字チェッカー
「ひらく漢字チェッカー」は当サイトが提供するオリジナルツールで、誰でも無料でご利用いただけます。
テキストを入力し、チェックボタンを押すだけで、上の表をデータベースとしてテキスト内の漢字をチェックできます。
ブラウザで動くシンプルな機能にしており、さくっと校正作業をしたい方にオススメです。(ブックマークして活用してもらえると嬉しいです!)
(有料)文賢
「文賢(ぶんけん)」は、Webマーケティング会社として有名なウェブライダー社がリリースしている、ライター・編集者向けの校閲・推敲チェックツールです。クラウド型のためインストール不要で利用できます。
- 読みやすさのチェック
- わかりやすさのチェック
- 不快語のチェック
- 日本語の誤用チェック
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上記の中には、ひらく漢字のチェック機能も含まれています。有料ツールではありますが、非常に高機能で、文賢ひとつあれば校正は完了してしまうオールインワンツールと言えます。
わたしも2022年頃からずっと使っており、執筆作業の手助けをしてもらっているオススメのツールですので、文章レベルを本気で上げたい方・利用検討していた方は、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
- 「漢字をひらく」とは、漢字をひらがな表記に直す校正用語
- ひらくことが推奨される漢字は多いが、一定の基準もある
- 漢字を適切にひらくことは、読者のストレスをなくし、文章を読みやすくする効果がある
当記事や、チェックツール作成時に参考にした書籍も紹介しておきます。ライターであれば手元にあったほうがよい一冊ですので、まだお持ちでないかたはチェックしておきましょう。
おまけの理解度クイズ!
当ページの内容を踏まえて、理解度チェックをしてみましょう!
3択問題
ヒント:文章を読みやすくするための校正用語です。
ヒント:あまり使用されない漢字はひらくことが推奨されています。
ヒント:複合動詞とは2語以上の自立語からなる動詞のことで、「動詞+動詞」で構成される言葉を指すことが多いです。
文章問題
問題1:以下の文章内で「ひらく漢字」があれば直してください。
「貴方の役割は予め資料を準備しておくことです。」
回答:
「あなたの役割はあらかじめ資料を準備しておくことです。」
問題2:以下の文章内で「ひらく漢字」があれば直してください。
「ピアノが上手ですね。秘訣を教えて下さい。」
回答:
「ピアノがじょうずですね。秘訣を教えてください。」
問題3:以下の文章内で「ひらく漢字」があれば直してください。
「勿論、そのまま進めてもらっても良いですよ。」
回答:
「もちろん、そのまま進めてもらってもいいですよ。」